ホーム初勝利は、開幕から3週間後のことだった。
「まず勝てたことがすごく嬉しいですし、ホームでやっとファンの皆さんに勝利を届けられたというのはすごくホッとしています」
そう喜びを露わにしたキング開に、須藤昂矢も続く。
「怪我人が増えて苦しい試合が続いていたので、やっとケーレブが戻ってきて、ホームで1勝できてホッとしています」
ホッとした。この2人の言葉にこそ、これまでの苦難が詰まっていた。


遡ること1ヶ月前。インサイドの要だったマイク・コッツァーの肩の手術が決まり、代わりに補強したケーレブ・ターズースキーも、プレシーズンゲーム初戦で肋骨を骨折。リリースでは「全治2ヵ月」と発表されていた。
相次ぐインサイドの離脱…
そんな窮地に大きな希望をもたらしてくれたのが、開幕直前に合流したキャメロン・ジャクソンだった。初めてB1の舞台に降り立った男は、加入したばかりとは思えない見事なフィットで、開幕節の琉球戦で連勝スタートに大きく貢献。しかし・・・
第3節の越谷戦で、そのジャクソンまでもがまさかの負傷離脱。続く島根戦ではビッグマンを1枚欠く厳しい戦いを強いられ、チームの連敗はついに「5」。インサイド不在で乱れたフロアバランスは、ウイング陣の積極性にも迷いを与えていた。
キングは言う。
「中・外のバランスが全然うまくいかなかった時期があったので、アグレッシブにやらなきゃという気持ちはあったんですけど、流れが悪い中で無理やり攻めて、良くないオフェンスフローになってもチームとしては全然プラスにならないので、その駆け引きが難しかったです」
崖っぷちのチームを救った男
迎えた、10月25日の茨城ロボッツ戦。崖っぷち寸前だったチームに舞い込んできたのは、予定より1ヶ月近く早いターズースキー復帰の知らせだった。インサイドに大きな支柱が戻ったオフェンスは、中・外のバランスが改善。ここまで確率が上がっていなかったウイング陣のシュートタッチにも、明るい兆しが戻った。
「最近の試合で3Pシュートのタッチがあまり良くなかったんですけど、今日は要所で2本決めることができて、だからこそ今度はディフェンスが寄ってきたところで、2Pに繋げるプレーも増えてくると思いますし、まぁバランスですね」
須藤はそう振り返ると、キングの言葉からも浮上の兆しがうかがえた。
「個人的にもちょっと上手くいってない時があったんですけど、今日はすごく持ち味も出しましたし、完全に自信が戻ったか分からないですけど、3Pシュートもやっと入ったので、ここから上げていきたいと思っています」

新たなディフェンスリーダーに名乗り
もう一つ、トゥオビヘッドコーチが「勝利の要因」にあげたのが、ディフェンスへのマインドセットだった。
「出だしはリードを許してしまい、入り方には満足できなかった。だが、第2Qはかなり良かった。特にディフェンスの意識だ。選手たちには、このままの姿勢でプレーを続けよう。ファンの前でハードに戦おうと伝えた。第3Qには少し苦しい時間帯もあったけど、良い精神状態で試合を戦えたよ」
そのディフェンスのトーンを、最前線からセットしていた1人が須藤だった。
「相手の起点になるプレーヤーに付くことが多いので、まずはラクにボールに触れさせないようにするのが自分の仕事。プレッシャーをかけたり、ディフェンスでトーンを上げていく。その『一つのキッカケになれるように』というのは意識しながらやっていて、今日もしっかり役割を果たせたのかなと思います」
©️B.LEAGUE
コーチ陣からの要望でオフには体重を3キロ減量した。
開幕前のエストニア遠征でも相手の起点を前から潰し、フットワークの粘り強さにはさらに磨きがかかっていた。かと思えば開幕のキングス戦では、ヴィック・ローを中心とした外国籍選手とのミスマッチに屈しない体の強さを証明。前線で足を動かし、インサイドでは体を張れる「守備範囲の広さ」には、指揮官も全幅の信頼を寄せている。
「彼のような選手を指導できるのは本当に嬉しい。ヨーロッパでは彼のような選手を『スイスナイフ』と呼ぶんだ。様々な特徴の武器を持っていて、状況に応じて多彩に使える選手という意味だね。どんな場面でも全力を尽くし、きっちり仕事をこなしてくれる。今日もテンポの速い試合の中で重要な役割を果たし、大事なシュートも決めてくれて素晴らしかったよ」
茨城戦に連勝し、再び上昇気流に乗っていきたいビーコル。次の課題はこのディフェンス強度を40分間、チームで維持していくこと。巻き返しの命運を握るのは、新たなディフェンスリーダーに名乗りをあげたこの男かもしれない。
「けが人が多くて、高い強度で40分間ディフェンスを遂行することが、ここ数試合はできていなかったです。ケーレブが返ってきてビッグマンの負担を減らせると思うので、高強度で長い時間やりたいバスケをできれば、もっと勝利も増えてくると思うし、そういうタフなゲームでも勝てるようなチームになっていきたいと思います」
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