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宇都宮ブレックスの強さを支える「コーチ陣の習慣」

3月上旬。報道陣に練習の一部を公開した宇都宮ブレックス。

残り1/3となったリーグ終盤戦、そして初の頂を目指すEASL FINALSへ。チーム練習の機会が限られる中で指揮官が重要性と語ったのが、「軸」をぶらさずも走りながら「修正」と「成長」を積み重ねていく事だった。

コロネルHC
「このバイウィークで重要だったのは、チームの習慣をもう一度作り直すこと。新しいことをやりたくなるものだけど、自分たちがやってきた事を積み重ねていかないと試合で発揮できなくなってしまう。だからこそ、実戦形式の練習機会は本当に重要だ。これから先のチーム習慣は、試合の中で作っていかなければいけないからね」

昨シーズンからチームの普遍的なテーマとなっているのが「習慣」だ。チーム練習終わりに、よその取材ではあまり見かけない「その一端」を垣間見た。

通常、チーム練習後はポジション毎に分かれ、まずは主力選手やベテラン選手たちからグループワークアウトが行われる。もちろん、そこに若手選手が加わることもあるが、むしろ彼らの本番は先輩たちのワークアウトが終わった後に待っている。

この日、最後までワークアウトを行なっていたのは、早稲田大学から特別指定選手としてやってきた松本秦。その様子を見ていて興味深く思ったのが、彼1人に割かれる「スタッフ陣の数」だった。

最初は4人に始まり(それでも多いのだが)、その後も続々と担当選手のワークアウトを終えたコーチ陣が加わり、最終的にはコロネルHCを含めた「7人」のスタッフが、松本の練習に最後まで付き添った。

その様子をケアをしながら見ていた田臥キャプテンが「他では違うんですか?」と筆者に聞いてきたように、チーム最年少の若手にここまで手厚いサポート体制は、BREXにとっては日常でも他チームでは当たり前の光景ではなかった。

ワークアウト後に現役大学生の松本と、数々のプロクラブを渡り歩いてきた田中ACに話を聞いた。

松本
「大学では良くてマンツーマンとか、2人付いてくれたりすることあるんですけど、(ここまでのコーチ陣の数でワークアウトするのは)僕はBREXに来て初めてですね」

田中AC
「いや、僕は過去に5クラブにましたけど、他ではないですね。しかもヘッドコーチもリング下にいるっていう環境はないと思います。僕も初めて見ました」

では一体、この「習慣」はいつから始まったのだろうか。囲み取材を終えていた指揮官に再度、取材を申し込むと快く答えてくれた。

コロネルHC
「この状況は多分、KB(ケビン・ブラウェルコーチ)が闘病していた時のことが背景にあると思う。あの時は私が暫定ヘッドコーチだったけど、コーチ陣が足りなくてヘッドコーチ専任どころではなかった。だから最初に指揮した琉球戦でも、記者会見が終わったらすぐにバスケウェアに着替えて練習場に向かったよ。出場時間が少ない若手選手たちの為に、出来ることを探したんだ」


なんと、きっかけはコーチ不足を発端にした「助け合いの精神」だったという。その当時の姿勢がコーチ陣の日常に染み付き、陣容が充実した今でも「習慣」として定着しているのだと言う。

田中AC
「メインの選手だけじゃなく全員が上手くなるために『何か助けられることがあれば、一人一人が協力しよう』という話をシーズン最初にしました。結果的にお互いが『手伝うよ、手伝うよ』と。先ほどの3対3のように、よりゲームライクな練習ができるんだったら「行くよ」みたいな感じで、皆が協力し合うようになりました」

練習に関わる人数が増えれば、それだけ実戦に近いワークアウトが可能になる。さらに、30歳前後のバリバリ動けるコーチ陣が多いことも、練習強度を上げる大きな要素となっているのだと言う。

田中AC
「僕らのコンセプト的にも、ディフェンスのカバレッジによって動きが変わるんです。ハードショーやドロップの判断ができないと、試合出れなくなっちゃうんです。それを考えると、ディフェンスが多くいた方が実戦的な練習ができます。僕というより、竹千代デベロプメントコーチ 兼 通訳(33歳)や、ニュージランドでプロ選手だったスタバンズAC(31歳)が、すごいアグレッシブにやってくれていますね

昨季、BREXが優勝に辿り着いた大きな原動力には、高島や小川といった若手選手たちの飛躍があった。その成長の裏に、こうしたコーチ陣による日々の献身的な習慣があったことは、無関係とは言えないだろう。

コロネルHC
「選手が学ぶべきことは、単に身体的なプレーだけではないんだ。まず目でプレーを見て、状況を判断し、次に意思決定していく。よく“知覚と行動の結びつきと言うけど、状況判断とプレーが調和していなければいけない。そしてもちろん、そのスキルや判断は一瞬で行われなければいけない。その状況を練習で作るには、コーチが多ければ多いほど良いと思う。

もしコーチが9人いれば、5対5の状況を作ることができるから。もし、選手のワークアウトを1時間手伝って仕事が遅れてしまったなら、1時間遅くまで起きて仕事をすればいい。正しいかどうかは別として、そうするべきだと思っているよ。自分たちは、選手に時間と力を投資することを選んでいる。出場時間が多いか、少ないかに関係なくね。BREXの選手であるなら誰でも成長できるように、ベストなサポートを尽くすだけだよ」

メディアデーから3週間後。宇都宮ブレックスはマカオの地で、初めて東アジアの頂点に立った。この大会期間中にも、コーチ陣の「習慣」を象徴するシーンに出会した。

現地時間20:30TIPOFFの準決勝後、報道陣がミックスゾーン取材を終えて帰ろうとすると、深夜0時を過ぎた会場ロビーには、2日後の決勝へ向けてミーティングを行うBREXコーチ陣の姿があったのだ。

それは、宇都宮での練習時となんら変わらない、いつもの光景だったように思う。だが、これぞまさに彼らが言う「習慣」の尊さであり、強さの源泉であると思わずにはいられなかった。

こちらの記事は↓の動画を元に作成しています

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