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今季限りで引退を決断した長崎ヴェルカ・狩俣昌也。B3時代から失わなかった日本一への想い

クラブ創設期から礎を築いてきた魂が、今季限りでの引退を表明した。2021年に長崎ヴェルカに加入した“ミスターヴェルカ”・狩俣昌也だ。

「本当に5年間、まだチームもない状況の時からたくさん応援していただきましたし、今では試合も満員の中でプレーできる環境を作っていただいているので、すごく感謝しています。引退を表明したんですけどまだシーズンは続いていくので、今はそこに向けて戦っていくこと、またその先のCSに向けて頑張りたいと思います」

14年の選手キャリアへの終止符。その決断の、最大の理由。

「体よりもメンタル的な部分が大きいかなと思います。1つは、B1に昇格させることが自分の中で本当に大きなモチベーションで来ていたので、僕が思った以上に「かける想い」が強すぎた反動じゃないですけど、B1に上がった1年目はなかなか気持ちが入ってこないというか…」

4月5日の引退会見で想いを語る狩俣

それだけ、長崎ヴェルカへの移籍は狩俣にとって「全てをかけた挑戦」だった。もちろん無謀ではない。ワクワクする未来が、この街にはあった。

「チームを作っていく本気度を感じたことが一番大きかったですね。例えばアリーナにしても、他のチームであれば『こういう構想がある』という話しか受けなかったんですけど、長崎はもう既に工事が始まっていたりとか、選手よりもスタッフを先にリクルートして、良いチームで戦う為に(伊藤)拓摩さんが色々動いているのも聞いていたので、その部分に僕は一番惹かれましたね」

長崎ヴェルカ初代ヘッドコーチで、現在は代表取締役を務める伊藤拓摩は、リクルート時に狩俣と交わしたこんな会話を覚えている。

「高田社長の方から『5年で優勝を目指せるチーム作りを』と言われたんですけど『いやそんな簡単じゃないですよ』って冗談半分でお伝えしました。当時は狩俣が滋賀のスターティング選手で、まだヴェルカというチーム名ぐらいしか決まっていない時に『目標は5年目で優勝を狙える位置にいること。優勝を狙える位置にあるクラブでいたい』と伝えたのを覚えていて。数週間前に彼にその話をしたら『そんな話ししましたっけ?』と覚えてなかったですよ」

正直、当時の会話はうろ覚えだと言う。「覚えてないという事は信じてなかったんですかね」と狩俣は当時を振り返ったが、ただ一つ、彼にはキャリアを通してブレない想いがあった。

「僕の中ではキャリアを始めた時から“日本一”というのが常に頭にあって、bjリーグの時に琉球で一度経験したんですけど、『日本一になりたい』という想いがモチベーションの一つだったので。それはB3にカテゴリーを落としてからもずっと思っていました。なので、今季はそのチャンスもまだあるので、何か信じられない気持ちもあります。でも、目標に向かってプレーしていけば必ずチャンスはあるんだと、改めて感じています」

そんな勝利への飢えこそが、わずか5年でヴェルカをこの位置まで連れてきた根拠だろう。勝利にこだわるレガシーは、新たに加入した選手たちにも確かに浸透している。

「彼はこのチームにとって“メンタルリーダー”のような存在だと思う。長くチームに在籍していて、B3からB1までずっとやってきたんだ。本当に彼をリスペクトしているよ。街でファンを見かけると、ただ勝ちたいという気持ちになる。どんなプレーをしてでも、勝つためにすべてを尽くしたい。それはマサが築いてきたレガシーを受け取ったんだと思う。自分も同じメンタリティーなんだ」

今季加入した韓国のエース・イ ヒョンジュン

そんな狩俣は、現役最年長の沖縄出身プレーヤーでもある。生まれは宮古島。それも名字と同じ「狩俣」という小さな集落で育った。地元に帰ればもちろんのこと、その活躍ぶりは画面を通しても島民のエネルギーになっている。

「一昨年に宮古島に帰った時に知り合いのおばあちゃんに言われたんです。バスケットライブで試合を見てて、僕が試合でシュートを決めたり活躍すると「狩俣がシュートを決めた!」と実況の方が叫ぶので、おばあちゃんは自分たちの地元が呼ばれることがすごく嬉しいのだと。そんな話を聞くと本当に良かったなと思いますし、そういう応援とか見方もあるんだなと思って。ちっちゃい島ですけど、夢を見せられたとしたら良かったと思います」

そんな長崎、そして故郷・宮古島のヒーローには、まだ終わっていない戦いがある。「個人じゃなく、チームで戦う」。その姿勢を“ミスターヴェルカ”として体現していく。

「誰かがやってくれるのではなくて、自分ができることをやる。それは試合であってもなくても関係ないと思っているので、今の若い選手たちも含めて、スタメンがやってくれるからというメンタリティーではなくて『自分たちがやる』というマインドでやる。それを全員できていると思いますし、もっとできると思うので、そこをチャンピオンシップに向けてより表現していけたらいいなと思います」

指揮官のマオールHCは、こうした出場時間に関係なく一貫した狩俣のプロフェッショナルをこう評する。

マサは今まで見てきた選手の中でも、競争心が強い選手なんだ。スカウティングの時も1人だけノートをとっているような選手だ。ローテーションに入っていなくてもね。例え20点差がついた試合でも、彼はトランジションを止めるためにファウルを使うだろう。それが勝つ方法だと知っているからね

30年のバスケ人生、全てを賭けて。思い焦がれた「日本一への最後の挑戦」が、いよいよ始まる。

「本当に勝つだけというか、勝つために何ができるかというところ。試合に出てもなくても関係ないですし、優勝だけですね。チームもそう思っていると思いますし、もう僕自身もそこしか考えていないですし、優勝を目指して頑張ります」

▼この記事は2026年4月に公開した
 こちら特集を元に制作しています

▼【6月公開予定】
 イ ヒョンジュン選手 ドキュメンタリー
 Nocutインタビュー先行公開中

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