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韓国ソウル&スウォン取材記(後編)「ヒョンジュン選手のルーツを探る旅」

Text & Photo/Yoko Konagayoshi

イ ヒョンジュン選手(以下ヒョンジュン)の次なる目標を追うために、「BTALKS」代表の市来健氏と韓国取材を決行。一時はヒョンジュン選手の記者会見取材がNGになり暗雲が立ち込めたが、無事に問題を解決してソウルへ。取材記の後編は、ヒョンジュン選手が決意を語った記者会見と、ヒョンジュン選手のルーツを探る水原(スウォン)市への旅の話を中心にお届けします。

▶︎前編はこちらから

ケビン・ガーネットからのアドバイスは胸熱だった!

6月6日、いよいよヒョンジュン選手の記者会見inソウルの日。

当日のスケジュールは、早朝8時半からヒョンジュン選手の記者会見があり、9時半からは一般公募で当選した大勢のファン&ヒョンジュン選手とNBAレジェンドのケビン・ガーネットをゲストに迎えた「NBAファイナル パブリック・ビューイングイベント」がある。ただし、このイベントには、私たち日本人記者は参加できないけれど(詳細は前編をご覧ください)。そして、午後からはヒョンジュン選手の母校である「三一(サミル)高校」に行くというスケジュールだ。

これまでの取材活動の中で、こんなにも朝早くからの会見に参加するのは初めてだ。アメリカとの時差があるため早朝に会見&イベントが行われるわけだが、早起きがまったく苦でなかったのは、おそらく、韓国取材が実現した喜びでアドレナリンが出ているからだろう(笑)。朝7時に市来氏と集合し、ソウル駅の隣にある龍山(ヨンサン)駅に直結したシアターに向かった。

シアターに着くと、いきなり目に飛び込んできたのが、ニックスとスパーズの選手たちがズラリと並んだパネルだ。

NBAファイナル第2戦 ニックスvsスパーズ

「おお!本当にここでパブリックビューイングやるんだ!」

今さらながら、ソウルに来たことを実感する。開演準備でバタバタしている中、早速、ヒョンジュン選手が所属するEPIK SPORTSのデニス代表に再会して御礼の挨拶。今回の取材をアテンドしてくれたパク・サンヒョク記者ともご対面。いつも会場で会う韓国記者さんとはお決まりのやり取りも。

「언제 왔어?(いつ来たの?)
「어제(昨日)」

「언제 일본으로 돌아갈 거야?(いつ日本に帰るの?)」
「아마도 오늘 밤(多分、今夜)」

「진짜!?(マジ!?)」
「진짜!(マジ!)」

これ以上の会話は翻訳機が必要になるので深い話はしなかったが(笑)、次は7月6日、高陽ソノアリーナで行われるワールドカップ予選Window3の日韓戦で会いましょう!

現地取材ならではの新しい出会いもあった。

有名なスポーツ専門イラストーターの광작가さん(クァンジャッカさん。日本語にすると「光作家」という意味)はヒョンジュン選手のイラストを描いて持参。日本のバスケ選手を描くことにも興味を持っているとか。渾身のイラストを綴ったインスタグラムはこちら。必見です!

また、EASLで韓国を担当しているオ・チャンファンさん(通称アレックス)にもご挨拶。彼は持ち前の英語力を生かして、ケビン・ガーネットのトークショーで英語の通訳を務める重責を果たしていた。これからもEASLでお世話になります!

スポーツ専門イラストーターのクァンジャッカさん

8時半からの記者会見は無事に終了。結論、会見に出席して本当に良かった!

NBAサマーリーグに出場する経緯や決意が聞けただけでなく、過去のサマーリーグとの違いは「心構え」にあることや、今回のサマーリーグに懸ける思い、馬場雄大選手との関係性などを聞くことができた。たった3日前の6月3日、長崎ヴェルカのファン感で見たリラックスムードとはガラリと違った引き締まった顔つきに、すでに渡米に向けた準備が始まっていることを実感した。

ヒョンジュン選手の会見内容は、このインタビューの「最後」を読んでいただけたら。

その後、NBAパブリックビューイングの間、私たちは近くのカフェで朝食をとりながら、会見のコメントをまとめる作業に取り掛かる。一息ついたところで、市来氏と本日のスケジュールを再確認。午後からは予定通り、三一高校に訪問することになっていたが、それ以外はヒョンジュン選手関連の取材はできなそうにないと判断したので、ここでようやく、帰国便を予約することに。

ここのところ毎日、空き時間に帰国便をチェックしていたが、狙っていた22時35分発のLCC便が当日でも値上がりしていなかったので、サクサクっと予約。23,000円也。

この便、日中遅くまで予定を入れられるし、帰りは羽田着なので東京都民には都合がいい。深夜1時半頃に羽田に到着するので、自宅までは深夜バス+タクシーを利用するか、始発まで空港にいることにはなるけれど、一泊分浮くという、節約取材をしている私たちにとってはとても都合のいい便なのだ。

パブリックビューイングこそ取材はできなかったが、それが終わると、イベント観覧者たちが帰り始め、シアター内の席が空いたということで、私たち日本人記者もそれ以後の取材ができることに(やっぱり、現場に来ればなんとかなる!)

ケビン・ガーネットとヒョンジュン選手のトークショー&インタビューセッションでは、貴重な話を聞くことができたので、ケビン・ガーネットからヒョンジュン選手へのアドバイスで心に響いたことを記しておく。これは、選手ならば誰もが自分に置き換えることができるアドバイスではないだろうか。

「NBA挑戦にあたり、もっとも重要なのは自信だ。時には他の人が傲慢だと感じるほどの自信が必要なときもある。NBAに挑戦するということは、結局、誰かの席を奪うということだから」

「最高の身体を作り、オフェンスだけでなく、ディフェンスでも競争力を示さなければならない。スポンジのようになって学び、質問しなければならない。そして答えが見えないときは練習コートに行け。結局、答えはトレーニングの中にこそある」

記者会見で決意を語ったヒョンジュン選手

ランチを食べたあとの15時過ぎ。次なる目的地であるヒョンジュン選手の母校、三一高校へGO! 22時35分発の飛行機に乗るまで、逆算するとタイムリミットは6時間。ソウルから水原(スウォン)までは約30~40キロ。サンヒョク記者の運転する車中で日韓バスケ事情の話に盛り上がりながら、1時間半ほど車を走らせると、いよいよ「수원(スウォン)」の看板が見えてきた。

ここで、水原市にある三一高校を紹介したい。

三一高校はヒョンジュン選手の他にも、多くの韓国代表を輩出している韓国の名門高。これは私の中の勝手なイメージだが、バスケスタイルはさて置き、実力的に日本の高校に当てはめると、韓国高校界のトップを誇る名門「龍山(ヨンサン)高校」と「景福(キョンボク)高校」は「福岡大学附属大濠高校」と「福岡第一高校」のイメージ。ソウル市内のど真ん中に両校があり、ライバルとして長年競っている点でも似ている。

三一高校はというと、ソウルから少しだけ離れた地方かつ、何度も優勝している硬派な名門というイメージなので、「仙台大明成高校」か「洛南高校」のイメージ。これで、なんとなく、ヒョンジュン選手の高校時代を思い浮かべることができるだろうか。

三一高校を代表するOBには、現代表のメインセンターを務めるハ・ユンギ(202㎝、ただし負傷中でWindow2とWindow3は欠場)、Window2で初代表入りしたカン・ジフン(200㎝)、三河でプレーしていたイ・デソン(193㎝)、韓国NBA第1号のハ・スンジン(221㎝)、今季Bリーグでプレーすると噂されているソン・ギョチャン(200㎝)などがいる。

個人的には、現役時代にたくさんの取材をさせてもらった、ヤン・ヒジョン(194㎝、2014年アジア競技大会で金メダルを獲得したときの主軸)と、現在の韓国代表でアシスタントコーチを務めているキム・ソンチョルコーチ(193㎝)の母校に訪問できたという意味でもうれしかった。

こうしてみると、三一高校はヒョンジュン選手を含め、大型ウイングやセンターを多く育てていることが分かる。もちろん、これらの選手を指導したのはヒョンジュン選手の父、イ・ユンファン監督だ。現在は指導の第一線からは退いているが、いつか、じっくりと話を聞いてみたい。(追記すると、ヒョンジュン選手の母、ソン・ジョンアさんは元バスケ韓国代表選手で、1984年ロス五輪の銀メダリストである)

水原市の街中に突如現れる「水原華城」(スウォンファソン)

車は目的地、三一高校に到着しようとしていた。付近には、世界遺産の「水原華城(スウォンファソン)」が見えてきた。

「まずは三一高校に行って、あとでここにも寄ろう」と言っていたのだが、なんと、三一高校は水原華城の目と鼻の先にあることが判明。地図で見て確認はしていたものの、あまりの近さに驚いた。水原華城の周りをバスケ部の選手たちが走っている姿を想像できるほどの近さだ。

断言する。ソウルに行くのなら、足を延ばして水原華城に行ったほうがいい。かくいう私も初めて来たのだが、「城壁・伝統建築・自然・街」との交わり具合が独特な雰囲気を醸し出していて、その景観に圧倒された。水原華城の周りには普通に民家もあり、変に観光地化されていなくて、水原市民の生活の様子も伝わってくる。高い建物がないから、日没後は城壁に夕陽が映えるだろうなあ。

世界遺産のお膝元に「三一学園」があり、「三一高校」「三一工業高校」「三一中学校」がある。読み方はハングル一文字ずつだと「삼일=サムイル」となるが、連音化するので「サミル」いう発音になる。

長崎ヴェルカでの優勝とMVPを祝した垂れ幕

「おおっ!!! ヒョンジュンがいた!」

と、最初に声を上げたのは市来氏。学校に近づいたのでゆっくりと車を走らせていたところ、三一高校の校門の脇に、ヒョンジュン選手の写真つきで「長崎ヴェルカ優勝&MVPおめでとう!」の垂れ幕が掲げてあったのだ。それだけでも誇らしい気持ちになるのに、観光客やファンの方も足を止め、撮影していたことも、またうれしかった。

三一高校の体育館に入って一際目を引いたのは、ズラリと並ぶ「優勝」「優勝」「優勝」のペナント。現在行われているワールドカップ予選に選出されたOBの名前もバスケットボールリングの上に貼られていた。これは部員たちのモチベーションアップ間違いなし!

個人的に、一番気分が上がったのは、2017年の「日韓中ジュニア交流競技会」での優勝ペナントを発見したときだ。この大会は、日本はU18代表が出場したが、韓国は当時の優勝校だった「三一商高」(当時の校名)の単独チームが出場。国際大会で優勝したからか、このペナントだけ単独で飾られていた。

この試合は、私が初めて生で「高3のユンギ選手&高2のヒョンジュン選手」を見た大会。韓国で大注目の2メートルコンビを取材しに行ったのだが、日韓戦(日本U18×三一商高)で、前半だけで5本の3ポイントを決めたヒョンジュン選手の衝撃は今でも忘れない。試合は三一商高が96-92で勝利。一時は大差をつけられたが日本だが、終盤に猛追するという面白いゲームだった。

2017年「日韓中ジュニア交流競技会」でのヒョンジュン選手

この日は、1年生のクォン・ギュボム君に話を聞くことができた。

この選手のお兄さんは、U18代表のキャプテン、クォン・デヒョン君。本当に偶然なのだが、この日の2日前、U18の日韓戦(U18東アジア地区予選)を福岡で取材した際に、U18代表のキャプテンということで、お兄さんに話を聞いていたのだ。まさか、三一高校で弟に会って話を聞けるなんて、こんな奇遇なことってあるだろうか。これまた素敵な出会いだった(お兄さんはまだ福岡で大会中のため不在)。

弟ギュボム君の話は市来氏のドキュメンタリーで紹介されると思うので、ここでは兄デヒョン君のヒョンジュン選手に対するコメントを紹介。

「ヒョンジュン先輩は三一高校の中で歴史に名を残した先輩。BリーグでMVPを獲ったことはすごいことですし、僕たち後輩の刺激になっています。韓国でも長崎ヴェルカの試合を中継しているので見ていました。僕もBリーグでプレーしてみたいですし、ヒョンジュン先輩のおかげで、日本のバスケに興味が出ている選手も多いんですよ。僕たち韓国U18は大型センターがいないので、ポジションに関係なく、全員で攻めるのが強み。9月のU18アジアカップで優勝することが目標です!」

これにて、韓国での取材はすべて終了。この日は時間的に練習を終えたあとの訪問だったので、体育館は静寂に包まれ、「ヒョンジュン選手はじめ、OBたちはここで育ったんだなあ…」と、ただただ、思いを馳せる尊い時間を過ごすことができた。次回は水原華城の観光を兼ねて、三一高校の練習見学に来るぞ!と誓うのだった。

三一高校バスケ部専用体育館

今の時代、取材内容はすぐにネットにアップされる。テキストでも動画でも、それこそ、閲覧数を増やすために、スピード勝負で編集なしにそのままアップする媒体もたくさんある。現にヒョンジュン選手の会見内容は、日本より動画投稿が盛んな韓国においては、すぐにアップされていた。これらの動画を見れば会見内容は分かるのに、「わざわざ韓国まで取材に出向く必要はあるのか?」と思う人もいるだろう。

ただ、いくら韓国内で動画が出回ったとしても、私たちの仕事は韓国人選手が発信したことを、日本の読者に分かるように、周辺や背景を取材して、自身の見解を添えられるまでに練り上げ、日本語で伝えることに意味がある。もちろん、他の取材もしかりだ。それは国内だろうと、海外取材だろうと変わりはない。

韓国で新たな目標のもとスタートを切ったヒョンジュン選手の表情は、明らかに優勝後のリラックスモードとは違っており、この様子を臨場感あふれる写真やテキスト、映像に収める取材ができたことに、韓国まで取材に行って本当に良かったと思うばかりだ。2026年夏、長崎ヴェルカで大きく飛躍し、NBAに挑戦する25歳のヒョンジュン選手の思いや表情は、今しか収められないのだから。

最後に。

韓国取材でお世話になった、バスケ専門媒体「ROOKIE」編集長のパク・サンヒョク記者、長崎でヒョンジュン選手のインタビュー通訳&翻訳をしてくれたパク・カンジャ記者、取材調整をしてくださったEPIK SPORTSのデニス代表に多大なる感謝をいたします。本当にありがとうございました。

BTALKS「イ ヒョンジュン密着ドキュメンタリー」の公開は6月30日、楽しみにしています!

BTALKSでは、イ ヒョンジュン選手のシーズン終盤3ヶ月に密着し、過去最長の「54分」で描くドキュメンタリーを6月30日(火)20時に公開します。
リターンは「エンドロールに名前を掲載できる権」「ナレーション収録見学権」等、盛りだくさん。ラストスパートのご支援、よろしくお願いします!

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