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3年連続MVPの偉業。「神」と呼ばれた男が、弱さを曝け出せた場所

「りそなグループ Bリーグ2025-26シーズン…B1レギュラーシーズン最優秀選手賞…MVPは…」

適度な緊張感が張り詰める、絶妙な間。プレゼンターの島田慎二チェアマンがそこまで言い終えても、男の表情は微動だにしなかった。しかし次の瞬間、「宇都宮ブレックス」の名前がコールされると、3年連続でそのタイトルを確実にしたD.J・ニュービルは、かなり驚いた表情をみせながら白い歯をこぼした。

©️B.LEAGUE

5月29日、「B.LEAGUE AWARD SHOW 2025-26」が東京ガーデンシアターで開催された。レギュラーシーズンの最優秀選手(MVP)が発表されると、会場からは歓声が上がった。そしてビジョンには、BREX NATIONから特別メッセージが流れた。

「勝負所で決める3Pシュートが好き」
「会場を盛り上げるダンクが好き」
「リーダーシップでチームを勝利に導いてくれる」
「あんなに出場していて怪我をしないのがすごい」
「手からシュートが離れた瞬間に入ったと確信できる」
「鉄壁のディフェンスがすごい」
「ニコニコとしたオフコートでのギャップが好き」
「絶対に諦めない姿勢が前面に出ている」。

彼を形容するその全てが、MVPにふさわしい理由そのものだった。

普段の会見では、そこまで口数の多いタイプではない。しかし、この日は約6分間にわたる受賞スピーチの中で、ファンやチームメイト、コーチや組織、Bリーグ全体へたくさんの感謝を伝えた。そして中でも印象的だったのは、家族への想いを口にした時だった。

「D.J・ニュービルで居続けることは、時にしんどい時もあるんだ。でも、家に帰れば妻や2人の娘が、自分を1人の夫、父、そして時には友達のように迎え入れてくれる。そういった支えなしでは、この成功は成し遂げられなかったと思うよ」

©️B.LEAGUE

ちょうど1年前。開幕前の取材で、家族の存在について話を聞いたことがあった。バスケの話をする時より顔をクシャッと綻ばせながら、長女のモアちゃんについてはこんな話をしてくれた。

「モアちゃんは陸上とバスケをやっていて、学校では一番、足が速いみたいなんだ。一緒に遊べる時間は時々あるけど、彼女も練習や遠征があったりして今はかなり忙しいからね。もうプロフェッショナルみたいな生活をしているよ」

「あなたの活躍を誇りに思っているのでは?」そう尋ねると、「栃木県では人気者だと思うよ」と誇らしげにはにかんだ。チームが毎週のレギュラー番組を持つ地元ラジオ局の生放送には、モアちゃんと2人で出演したこともある。そんな大切な家族の存在について、当時の取材ではこんな言葉を残していた。

「My family is my backbone. They’re my strength, and my weakness at the same time.」

直訳すれば、「家族の存在は最大の強みであり、同時に弱みでもある」。だが、その時は「弱み」という訳がどうもしっくり来なかった。

アワードの授賞式を終えて、ステージ脇にはミックスゾーンが設けられていた。そこに姿が見えるやいなや、MVPトロフィーを手にした男は多くの記者にすぐ囲まれた。それもそのはず。3年連続MVP受賞は、Bリーグ誕生10年の歴史で初の快挙だった。そして、ペン取材の後はムービーゾーンへ。照れ隠しをするように「5分以内にしてくれよな」と笑いを誘ったニュービルに、ステージ上で語っていた「D.J・ニュービルでいることの難しさ」を改めて聞いてみた。

「プレッシャーというのは、悪いことではないんだ。でも家を一歩出ると、みんな自分を『バスケットボール選手』として見る。そして、色々なことを期待する。でも、家にいるときだけは違う。家族がいて、子どもたちがいて、妻がいる。そこではもう「D.J・ニュービル」という選手である必要がないんだ。ただの父親であり、夫なんだよ。そういう時間が、人生に安らぎを与えてくれるんだ。なぜなら、バスケットボールの世界には浮き沈みがたくさんあるからね」

“神”と呼ばれた男も、当たり前のように一人の選手として孤独と闘っていたのだ。取材ではいつも自信に満ちた言葉を口にしていたが、その裏には、アスリートなら誰しも直面する葛藤や不安、恐怖心と向き合い、それを乗り越えてきた日々があった。

ここまで書き進めてきて、1年前の言葉の輪郭が少しだけ鮮明になったように思う。

「My family is my backbone. They’re my strength, and my weakness at the same time.」weakness を「弱み」と訳すことに違和感を感じていたが、あえて意訳するならこうしてはどうだろうか。「家族は自分が最も強くいられる原動力であり、唯一、弱い自分を曝け出せる存在でもある」と。

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